公開: 2019年7月31日
更新: 2025年2月16日
2018年末の旧日産自動車会長、カルロス・ゴーン氏が日産の会計報告に記載した本人への給与額を、実際よりも少なく報告していたという虚偽記載の疑惑で、東京地検に逮捕された事件がありました。この事件では、日産の株式の多くを保有しているフランスの自動車会社ルノーの会長もゴーン氏が兼任していたため、ルノーの経営に支障をきたす可能性があったため、ルノーの筆頭株主であるフランス政府は、対応を求められました。さらに、ルノーは、それ以前から、フランス政府の意向を受けて、日産を実質的に子会社化する方針で準備を進めていたらしく、ゴーン氏の逮捕により、その戦略の実施に問題が出てくる可能性がありました。日産の一部には、ルノーによる経営支配に反対する勢力があったからです。この問題では、フランス政府は、日本政府に対して、公正な立場を維持してほしいとの要請を、外交的な交渉で述べていたようです。日本政府の立場は、日産とルノーの問題は、民間企業の問題であり、国家が関与すべき問題ではないとするものでした。これは、フランスからの要請を、拒否したものであると解釈されます。日本政府は、日産の経営権をルノーに握られることを避けたいと考えていたのでしょう。
また、2025年の2月に米国を訪問し、トランプ新大統領との初めての首脳会議を行った石破総大臣は、その会議の席上で、日本の企業である新日本製鉄が、米国企業であるUSスチールを買収し、完全子会社化を行おうとしている問題について、トランプ新大統領が国家安全保障上の懸念から、反対の意志を抱いているとの観測に基づき、「新日本製鉄はUSスチールに多額の投資をしようとしている」と述べ、米国政府が「この問題に干渉することのないように」申し入れました。これも、個別の企業間の問題に、国家が法的に介入する例です。